中国のキリスト教事情で、困った出来事が起こることがある。家の教会の信徒と三自愛国教会に通う信徒が、職場などで出会うことがあり、お互いクリスチャンであると分かると信仰の話に発展するという。ところが、三自の教会に通う信徒が言ったそうだ。「雷邦は人民解放軍の英雄で良いことをした。だから、彼は天国に行けるのだ」◆雷邦とは事故で亡くなった人民解放軍兵士だが、彼の死後、毛沢東主席と中国共産党に忠誠を尽くす心情が面々とつづられた書面が見つかったため、一躍英雄に祭り上げられた人物である。中国の国定教科書にも紹介され、共産党政府は「雷邦に学べ」と大々的に宣伝を続けている◆「良いことをしたから天国に行ける」という教えに、家の教会の信徒は戸惑いを覚えたという。「それは違います、人はイエス・キリストを救い主と信じて天国に行ける」と、反論したい気持ちをぐっと抑えたとも語る。その家の教会の青年は「キリスト教にも中国化が進んでいるのです」と話していた◆「教会は、信仰義認の教理を語るのではなく、神の愛を語りなさい」と、三自愛国教会のリーダーが全国の教会に布告したことは事実だ。

※中国には、政府公認の「三自愛国教会」と、そこに加わらない「家の教会」がある

2021年7月18日号掲載記事

落ち穂:家の教会の一斉摘発が続いている中で